研究概要 |
本研究は, 植物細胞の形態形成と植物ホルモン生産との関連を総合的に解析することを目的として, 植物腫瘍病菌によって誘導される形態形成の異なるクラウンゴール細胞を対象に, ジベレリンの内生量と合わせて, オーキシンやサイトカイニンの含量についても分析を試みた. 1.オーキシン(IAA)とサイトカイニン(RZ, Z)のイムノアッセイによる定量法の検討:ニチニチソウのクラウンゴール細胞を材料として, IAAとRZの含量についてモノクローナル抗体のELISA分析キットによる分析を試み, 化学分析法を併用してその値と比較検討した. その結果, IAAのイムノアッセイでは信頼度の高い値は得られなかったが, RZ, Zについては, イムノアッセイにより半定量的ではあるがジベレリン値が得られた. 2.タバコ腫瘍細胞におけるジベレリン(GA)生産: タバコに腫瘍遺伝子(pTi-T37プラスミド)を導入した後, クローン化して得た未分化細胞と茎葉を分化したテラトーマ細胞について, 生育に伴うGA含量の変動を調べた. GC-SIMにより同定・定量を行った結果, テラトーマ細胞では生育の盛んな時期にC_<20>-GAであるGA_<53>, GA_<19>が高レベル(700-800pg/g fr wt)生産されることがわかった. 一方, 未分化細胞では生育期間を通じていずれのGAも低レベル(100pg/g fr wt以下)であることを確認した. 3.タバコ正常植物の茎葉部のジベレリン: タバコの種子発芽後, 4週間を経た茎葉部のGAを同定・定量したところ, C_<20>-GAであるGA_<53>, GA_<19>は160-140pg/g fr wt, C_<19>-GAであるGA_1, GA_<19>が69-140pg/g fr wtのレベルで含まれており, タバコ腫瘍細胞とは主要なGAの種類が異なることが明らかとなった. 今後は, さらに, 他の培養細胞について詳細に検討を行う計画である.
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