昨年度までの本研究において、タバコの各種培養細胞に含まれるジベレリンを精査した結果、脱分化した細胞ではジベレリン生産能は極めて低いが、茎葉を分化した細胞では正常な植物組織に匹敵する量のジベレリンを生産していることを見いだし、細胞の形態形成とジベレリン生合成機能が密接に関連していることが示唆された。本年度は、この事実を確認するため、以下の細胞の内生ジベレリンについて検討を行った。 1.ニチニチソウのクラウンゴール細胞の内生ジベレリン:クラウンゴール細胞は転入されるTi-plasmidの種類によって形態形成能が異なる。一般的にオクトピン型のTi-plasmidをもつ細胞は分化しにくいが、ノパリン型Ti-plasmidをもつ細胞は茎葉を分化しやすいとされている。そこで、ニチニチソウのオクトピン型細胞(V277)とノパリン型細胞(V208)との間でのジベレリン生産能の違いを調べた。それぞれの培養細胞の抽出物について、イネ短銀坊主の幼苗を用いた生物試験法により活性型ジベレリンの含量を調べたところ、ノパリン型のV208細胞は明らかに活性型ジベレリンを生産していることがわかった。一方、V277細胞の抽出物にはほとんどジベレリン活性が認められなかった。V208細胞抽出物のジベレリン区分を精製し、ジベレリンの同定を試みたところ、GC-MSにより活性型ジベレリンの一つはGA_<24>であることが確認された。 2.タバコのクラウンゴール細胞の内生ジベレリン:ノパリン型のタバコクラウンゴール細胞(SRI-3132、iaaH^-)は茎葉を分化し、ジベレリン生合成の中間体であるカウレン生合成能をもつ。この細胞の内生ジベレリンをGC-SIMによる同定定量法によって分析したところGA_<19>、GA_<23>、GA_<53>などのC_<20>-GAが高レベルで存在することがわかり、前年度にpTi-T37 plasmidをもち茎葉を分化する細胞について得られた結果と一致することが確認された。
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