研究概要 |
1.調査対象地:安比スキー場(岩手県安代町), 網張スキー場(岩手県雫石町), 鴬宿スキー場跡(岩手県雫石町) 2.調査項目と結果:浸食形態の分類を試みた結果, 1)禿赭型, 2)ソリフラクション型, 3)ガリ型がみとめられた. このなかで土砂害に結びつきやすいガリ型の生成環境をしるため, 鴬宿スキー場跡(現在休業中)において精査をおこない次のような知見を得た. 1)調査地の地質:第三系中新統の橋場層に属し, 岩種はデイサイト質粗粒凝灰岩である. 一般に降水の浸透率が高いため谷の発達は少ない方に属する. 2)斜面地形:ほぼ東向で, 傾斜角は上部27°, 中部19°, 下部16°, 平均21°の下降斜面である. 斜面長は平均70m. 3)植被:スキー場造成の際, 地表の凹凸をならすため, 表土を剥ぎとったところと, その材料で埋めたところがある. 前者は裸地に, 後者はススキ群生地になっている. これらに隣接して対照としてのアカマツ林がある. 4)土壌:飽和透水係数(本補助金による購入機器で測定)は, アカマツ林で6.6×10^<-3>cm/s, ススキ群生地で9.6×10^<-3>cm/sに対し, 裸地斜面では1.8×10^<-3>cm/sであった. 透水性と現地の浸食度には明確な対応関係があった. 5)ガリ網の幾何学的特性:水系網発達に関するHortonの法則のガリ網に対する適用性を検討した. 最高次のガリは3次であったが, ガリ数と次数, ガリ勾配と次数の間にはよい適合性がみとめられた. しかしガリ長さと次数とは良好な適合性を示さず, 対象ガリ網が動的平衡状態に達していないことをうかがわせた. 6)ガリの体積を流亡土量とみなし, 造成後の年平均浸食深を求めると, ススキ群生地で0.9mmに対し, 裸地斜面では3.2mmであった.
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