研究代表者、分担者を中心に地元政策研究会を組織し、2ヶ年間に1県7市町村の実態調査を実施すると共に、全国的資料の収集・分析、地元制度の推移について検討を加えてきた。それら研究結果を総括すれば、 1.国・公有林野の所在する地元集落を核として形成されてきた地元関係-稼用・自家用林産物の特売や放牧・採草利用による地元産業保護、その代償としての労働力調達-は解体しつつあり、利用関係の後退に伴い共用林野、貸付林野の直営林への組合、契約に基づく分収林の導入等が広くみられる。総じて村落共同体から協業体形態の利用集団へと、「地元」の主体が移行しつつあると共に、「ふれあいの森」「レジャー施設」等の導入によって、地元概念は地緑的慣行集団から、不特定の地域外関係者に拡散しつつある。 2.地元関係の実体を辛うじて保持させている要件は、国・公有林野事業に対する就労関係である。この関係も地元の共同体を核として結合されるのでなく、森林組合や請負事業体など、機能的組織を通じて結合され、組織としての結合力は強固なものではない。 3.現在地元施策が問われる所以は、森林管理の体制が劣悪化しつつあるなかで、地域森林の管理主体をどお育成していくかが焦眉の急務だからである。地域森林の管理主体は、所在する地元の住民集団を措いてなかろう。その場合の地元住民集団の組織化は、これまでの地元施策の延長線上では不可能と思われる。行政区(部落)単位に緩やかな森林管理組合を組織化し、管理交付金等の制度を設けるなどして日常的管理の体制を確立すべきであろう。 4.今後の研究として、諸外国に於ける地元施策と地域森林の管理システムについて研究を進める計画である。
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