研究概要 |
マメ科の植物では根粒の表面に種々の微生物が生息し、植物の生育や根粒形成に何らかの影響を及ぼすことが知られている。本研究では根粒を形成する非マメ科の樹木を対象とし、根粒の表面に生息する非共生窒素固定菌の分布とその樹木に対する影響を検討した。 1.非マメ科植物の根粒表面における窒素固定菌の分布 東京大学北海道、秩父および愛知の各演習林、および山梨県富士山五合目御庭の各所に生育するハンノキ属の樹木より根粒を採取し、その表面より窒素固定菌を分離した。採取した地点(樹木)によって窒素固定菌の分布には差があり、東京大学の各演習林の試料(ケヤマハンノキ,ヤシヤブシ)からは窒素固定菌が分離されたが、富士山五合目ミヤマハンノキの根粒からは分離された。 2.ハンノキに対する窒素固定菌接種の効果 無菌栽培したハンノキの幼植物の根に分離した窒素固定菌を接種して栽培し、生育に及ぼす最近接種の効果を検討した。非接種の植物は裁判2か月頃になって枯死したが、細菌を接種して栽培した植物では、細菌によっては枯死せず、健全な生育を続けた。有効な細菌はすべて根粒表面より分離したもので、根粒に近接した根より分離した細菌は接種の効果がなかった。根圏生息性の窒素固定菌Azospirillumも健在な生育に有効であった。 3.単離した細菌の菌学的性質 ハンノキの健全な生育に有効な細菌の性質を検討した。供試した9株の窒素固定菌のうち、7株はEnterobacteriaに属する可能性が示唆された。これらの研究を通じて非マメ科樹木の根粒表面における"根粒圏"の存在が推定された。
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