研究概要 |
本研究は本学演習林のシオジの幼齢林と壮齢林とを材料にして, 天然力を十分に活用した更新の方法と拡大造林の一手法としての人工造林法の施業体系化の基礎について行ったものである. 得られた結果は次のとおりである. 1.シオジ林の結実は隔年に並作か豊作となり, その間は発芽可能種子のない凶作年となっているが, 天然更新に不可欠な大豊作や豊作の周期を明らかにすることはできなかったので, 継続調査が必要である. 秋に採取した種子は冷蔵密閉貯蔵し, 播種の2〜3か月前に土中埋蔵すること, 直根性であるので早期の根切りが必要であること, 開舒前の冬芽は脆いので秋植えが必要であることなどが明らかになった. 2.天然生稚樹は種子落下の翌年の6月以降に発芽するが, 1〜2年間でほとんどが消失した. 消失の主因は, 地表面流水による土壌流亡と陽光量付則とであるので, 上木の疎開で林床の陽光量を増加させることで稚樹の消失を防ぐことはできるが, 疎開後の雑草木との競争の解除の豊作を明らかにする必要がある. 3.更新が最も安全・確実は人工植栽がシオジにも有効であるが, 幼稚樹の成育には豊富な土壌水分が必要であり, 花崗岩質土壌では保水性が乏しいことでシオジ造林木の成長は不良であった. 土壌水分による適地判定の基礎研究が必要である. 4.天然生林の多くの成立立地は, 土壌の薄い石礫地の渓流沿いや渓畔地であるが, このような立地は人工造林の適地とは言いがたいので, このような立地での天然更新法を確立することは, 渓流・渓畔地の土砂崩壊の防止や景観維持と同時に長伐期でのシオジ有用材生産を考えることが社会のニーズの多様性に応える森林の扱い方として必要である.
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