研究概要 |
本研究では、日本列島各地の森林調査資料約3800点をデ-タ化して計算機に入れ、さらに調査地のデ-タを作成して森林資料を組み合わせて、それぞれの種類、調査地などが自由に取り出せるデ-タを作成した。そのデ-タ集から、温度条件(傾度)に従って、日本の森林がどのようになっているかを解析したものである。 昭和62、63年度には、資料のデ-タ準備、調査地の気候のデ-タ準備を行ない、約80000のデ-タ群を作成した。そのデ-タに基づき、主に森林帯としての特徴を調べた。その結果として、日本の森林は、中間温度帯(暖温帯と冷温帯の境界付近)で最も種類数が大きくなる特殊な構造をもつことが明らかとなった。その構造は、島という隔離条件のもとで、氷期以後、気温が上昇したことによることを明らかにした。外観からみると森林帯に区別できる日本の森林も、その内容は重複した生活型構造をもっていた。この構造も、氷期の際に島として隔離されていたために、常緑、落葉種が共存する性質を十分に残したものであった。 本年度は、上記の森林全体の研究を受けて、日本の森林の骨核をなすブナ科植物群に視点をあて、それらの温度的位置、種類と種類の重複分布関係を検討した。ブナ科全体の分布は亜寒帯から亜熱帯まで広く分布するが、分布の中心は暖温帯の上部にあり、そこでは落葉種と常緑種が重複して分布する。しかし、ブナ科内の近縁種は、全体的には異所的(すみわけ)分布をしていた。同じ調査区内にA,B2種が共存する度合を、Coleの指度、Codyの重複度によって調べると、共存性の認められる種が多数存在した。以上の近縁種の関係は、共存の排除の機構が働いているものでなく、種が分化した後の歴史性を物語るものと解釈した。重複度からクラスタ-分析を行なうと、常緑種は常緑種で、落葉種は落葉種間で共存性が強いデンドログラムが得られた。
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