研究概要 |
本年度は次の二つのテーマについて研究を行った. 1.マツ及びケヤキ老齢木の生長, 形質, 価格の調査と長伐期施業の検討. 大阪営林局日原営林署(島根県日原町)産の馬角マツおよびケヤキの老木について調査した. 馬角マツは大部分がアカマツで, 樹齢180〜200年, 胸高直径70〜110cm, 樹高28〜36mで, 枝下高が高く幹は通直である. 樹皮は貝殻状で薄く, 心材は赤褐色〜淡褐色, 心材率は平均65%である. 直径生長は最初の50年間が旺盛でその後徐々に衰えるが, 100年以降も比較的生長の良いものもある. 材質については, 仮道管長は髄から80年論まで増加し続け, 最大値に達した後減少する. 気乾比重及び縦圧縮強度は髄から約40年まで増加し, その後減少する. 木材価格は径級が大きくなるに従って高くなり, 胸高直径80cm以上で著し上昇がみられた. 高品質材の生産目標は, 胸高直径70cm以上, 伐期齢150年である. ケヤキについては, 直径生長に早生型と晩生型の二つのタイプが認められた. 早生型は70〜80年で利用径級に達するが, 木目が荒らく, 心材淡褐色で価格は安い. 晩生型は150年前後で利用径級に達し, 心材赤褐色のものは高価である. 高品質材の生産目標は, 胸高直径70cm以上, 伐期齢150年であるが, 早生型の個体を選抜すれば短〜中伐期向きの品種の育成も可能である. 2.クヌギ・アベマキ混交林における遺伝変異の研究 中国地方のクヌギ・アベマキ混交林でクヌギ・アベマキ及び両者の雑種と思われるアベクヌギの葉及び樹皮形態の変異を調べた. クヌギとアベマキは葉裏の毛茸の状態及び外樹皮の厚さ, 質によって容易に識別できる. アベクヌギは変異の幅が広く, クヌギに近いものからアベマキに近いものまであった. 各形質の相関関係を調べて三つの種の識別点を検討した. 葉毛量と樹皮厚比は正の相関関係を示した.
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