森林は、緑資源として、生物生産機能・環境保全機能・遺伝情報源など多様な機能を有している。実際にこれらの諸機能を有効に利用するためには、森林の具体的な存在形態である群落の正確な把握が不可避である。 本研究は、このような群落の特性を、構造的特性である種構成と機能的特性である生産構造の両面からとらえ、この両特性を多度量解析手法を用いて分析することによって、群落の定量的・客観的な分類とその動態について検討することを目的とした。 調査対象としたのは、森林群落としては最も複雑な構成を有する都市近郊林であり、主として岡山大学付属半田山自然研究教育林内の森林で調査した。毎木調査と伐倒調査をし、種構成と生産構造を詳細に測定した資料に基づき、多度量解析を行った。 その結果、研究対象としたような極めて複雑な構成を有する森林群落についても、従来は全く不可能であった定量的・客観的区分が可能であることを証明した。本分類法は、単に機械的な区分が可能であることを示すものではなく、その質的(種構成)・量的(生産機能)側面から検討されているため、群落構造の本質的な解明のための糸口をも与えるものであることが特長といえる。また、その結果を基にして、経時的な群落の動態についても解析が可能となり、本研究ではこれを理解の容易なコンピューターグラフィックスモデルとして提出した。このモデルによれば実際的な緑地計画や環境アセスメントなどにおいて応用的な利用が可能である。 今後は、ここで得られた成果をもとにして、さらにシステム・ダイナミックスなどの本格的シミュレーションシステムを開発する予定である。
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