研究概要 |
本研究は, 水分動態にとって重要な外的, 内的要因を特性の異なる樹種や品種について調べ, 自然状態の水分動態を予測するシミュレーション・モデルを構築するとともに, 根における水分吸収の機構について解析をおこない樹木が遺伝的にもつ各種の特性が水分動態, ひいては光合成ならびに生長にどのように関与するかを検討するために, 実施したものである. 本研究は2年間で行なう研究であり, 初年度では, 次の項目について研究を行なった. 1.樹木における葉の水分特性の季節変化:耐乾性の異なる樹種として, クロマツ, ヒノキ, スギ, マテバシイ, コジイを対象に, P-V曲線法を使用して, 葉の相対含水率と水ポテンシャル, 圧ポテンシャル, 浸透ポテンシャルとの相互の関係の季節変化を調べた. また, クロマツでは, 生育場所と葉の水分特性との関係を調べた. その結果, 水分特性の変化は樹種間, 季節間ともに比較的小さいことを明らかにした. 2.葉のコンダクタンスに及ぼす内外環境の影響:葉のコンダクタンスに影響する要因として, クロマツ葉について, 気温, 大気-葉間の水蒸気密度落差, 照度, 土壌水ポテンシャルの影響について測定した. これらの関係を数量的に表示する方法について検討した. 3.樹幹各部位の水ポテンシャル, 蒸散流速, および通水抵抗:ヒノキを対象に, 樹幹各部位の水ポテンシャル, 蒸散流速を計測し, 通水抵抗の日変化を調べた結果, スギの場合と異なり, 流速によって, 幹の通水抵抗が変動する傾向が得られた. 4.水ポテンシャル測定における断熱法の確立:幹内の水ポテンシャル計測精度を高めるために, 樹幹部の断熱法について, 伝熱工学的検討をおこないこれまで以上の断熱効果をあげることができた.
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