木質壁体の防露設計法の確立のために、前年度に引き続き、非線形の熱水分同時移動方程式の適応性の検討をするとともに、木質壁体の空気層のモデル化を試み、3層の壁体についても非線形方程式を適用した。壁体の結露実験もおこない、得られた結果は以下の通りである。 (1) 方程式に現れる諸係数のうち、温度勾配による水分拡散係数の値を、ベイツガ、ラワンなどについて測定した。測定値は含水率に対して正規分布曲線状に分布し、試験片の水分量が多くなるに従って、分布のピーク値は大きくなり、高含水率側にづれることが認められた。これらの値を用いて、非線形方程式を木材の乾燥過程、吸水過程、及び単層壁体に適用したところ、材料中の温度、含水率の計算値は実測値と比較的良く一致し、有効な計算法であることが認められた。 (2) 中空層を含めて3層の壁体の結露実験を継続しておこない、空気層の厚さは、壁体中の温度、含水率及び空気層の相対温度に対しては強い影響をもたないこと、低温側に断湿層をもたない外側開放型の壁体では条件によって、空気層及び材料中に水分の蓄積がみられるが、断湿層のある壁体に比べて少ないことなどが認められた。 (3) 空気層の熱、湿気伝達率等価モデルとともに、空気層の温湿度は流入、流出する熱、水分で定めるモデルを検討した。(1)で得られた係数を利用して、非線形の熱水分同時移動方程式を3層の壁体に適用した。温度、含水率の計算値は実測値に近い値を示した。しかし、中空層の相対湿度ではそれほど良い一致がみられなかった。以上から、さらに適切な中空層のモデル化は必要であるが、実用的な木質壁体の防露設計法として、本計算法は有効なものであると推定された。 (4) 前年度の恒湿槽を恒温恒湿槽に改良し、熱、水分の負荷が大きくなければ、塩の飽和水溶液を利用したものでも実用の可能性が認められた。
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