研究概要 |
丸のこの鈍化にともなう切削音の変化を今年は特に切削音の周波数特性を中心に考究した. 実験に用いた丸のこは直径355mm, 厚さ2mm, 歯数40の合金工具綱(SKS-5)で, ふりわけとばちのあさりをもつ2種である. 回転速度は, 3000, 3300, 4000rpmの3水準とし, 送り速度は6m/分一定とした. 各実験条件において, 寿命に達するまでパーライクルボードを切削し, その間における, 送り刀, 切削所要動力, 切削音, 歯先摩耗量(すくい面後退量とあさり後退量)の変化を測定した. また切削音の周波数分析を行った. 切削音の周波数分析を行うと, 空転時のスペクトルを比べて, 1KHzから上の高周波数帯域に切削によって生ずる周波数成分が存在することが明らかである. 丸のこの鈍化が進むと送り力や切削所要動力も増加するが, 音響的にみれば, 1kHz以上のいくつかの1/3オクターブバンドレベルにおいて, オーバーオールの増加dBを上まわるdBの増加が認められた. そして歯先の摩耗量と特定の周波数域の音圧レベルには強い相関関係がみられた. 例えばふりわけあさりの銀, 3000rpmでは中心周波数6.3kHzの1/3オクターブバンドレベルは歯先摩耗量との間に0.96というきわめて高い一次相関を示したし, 同じくばちあさり3,000rpmでは315kHzにおいて0.92と, いずれも摩耗量とオーバーオール音圧レベルとの相関を上まわる結果を示した. 今年の実験結果より, 丸のこの切削音は歯先摩耗と非常に密接な関係にあり, 切削中の丸のこの鈍化を知るのに切削音音圧レベルの測定は有効な手段であるといえる. 特に特定の帯域の高周波数音の測定によって歯先摩耗量を性格に知ることが可能であり, また高周波域での測定は暗騒音による妨害が, 比較的少ないから, オーバーオール切削音の測定よりはるかにインプロセスでの工具鈍化センサーとして有用であると思われる. 昭和63年度では, 歯先摩耗とAEとの関係を考究する.
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