研究概要 |
コロナ放電処理による紙の表面改質の機構を解明するために, 化学ラベル化法-ESCAなどの手法を用いて以下の結果を得た. 尚, 供試試料としては, ワットマン3紙, N・BKP手すき紙, TMP手すき紙, 再生セルロース・フィルムをエタノール/ベンゼン混液により抽出処理したものを用いた. (1)上記試料をコロナ放電処理すると, それら試料表面にはカルボニル基が150個のグルコース残基あたり数個導入されることを化学ラベル化法とESCAを組合わせて示した. このことは現実の操業条件に近い放電条件においても認められた. (2)上記試料をコロナ放電処理した後に, 水素化ホウ素ナトリウムによって還元処理するとカルボニル基によるF_<1s>ピークのC_<1s>ピークに対する強度比が約1/4減少することを見出した. このことは精製したカルボニル基の約1/4が還元性基, つまりアルデヒト基であることを示している. (3)シッフ試薬によって放電処理面を処理すると紫色を呈し, 未処理面の紫色より濃いことが判った. このことは放電によりアルデヒト基が生成しているとする(2)の結論を更に裏付けるものである. (4)上記試料中の還元性基を塩酸-セミカルバジッドにより湿式分析したところ処理前後でほとんど変化が見られなかった. このことは還元性カルボニル基(アルデヒト基)は放電処理により供試試料の極イ表層にのみ生成することを示すものと考えられる. (5)上記試料中のカルボキシル基を祖父江の方法により定量したところ, 放電処理により, 試料100gあたり最大で16mMのカルボキシル基が導入されることが判った. (6)放電処理が0〜30病の間は処理時間の増加により再生セルロースフィルムが漏れ易くなることを認めた. (以上)
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