研究概要 |
1.針葉樹樹皮抽出物の特性: 北洋カラマツ樹皮の熱水およびメタノール抽出物のフラバノール量(F値)、全フェノール量(P値)、UV純度などの一般的特性値は類似していたが、核交換法によるフェノール核パターンは相違しており、抽出手法が特性に影響することを確認した。また、国産カラマツ、スギ、ヒノキ樹皮の逐次抽出物の一つであるアセトン抽出物は北洋カラマツに比べてF値、P値ともに大であるが、分子量の大きなメタノール抽出物のF値、P値、F/P値は比較的小さかった。 2.フェノール化および核交換反応に及ぼす酸触媒の影響: 水の存在で失活することのないブレンステッド酸触媒を用いて、フェノール化と核交換反応に及ぼす影響を検討し、非水系では標準核交換試薬用触媒(BF_3)の触媒活性が優れていることを動力学的に証明した。また、含水フェノール・ブレンステッド酸系の酸強度をハメットの酸度関数で表示し検討したところ、酸強度は含水量の増加に対応して低下すること、およびフェノール化速度と強い相関々係のあることを認めた。 3.タンニンからの硬化性樹脂の合成: ワットルタンニン,塩酸触媒およびレゾルシノールまたはフェノール媒体で調製した樹脂の常温接着および中温〜高温接着剤としての性能について検討した結果、タンニン:フェノール配合比=1:1モル(重量比=100:32)の条件で調製したフェノール変性樹脂の接着性能は、市販レゾール樹脂を上回っていたが、レゾルシノール変性樹脂の常温接着性は十分でなく、さらに適正な分子量分布、分子形態を有する樹脂調製のための変性条件を基本的観点から検討する必要があった。
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