広葉樹資源の枯渇が盛んに叫けばれている。これは東南アジアを中心とした地域からの輸入材の減少、スギ、ヒノキを中心とした拡大造林のもとに国内産広葉樹材の伐採量の増大に加えて、建築構造や生活用式の多様化に伴った内装用、工芸用としての良質の国内産広葉樹の需要の高まりに原因している。温、暖帯および一部亜熱帯を含む南九州地域に生育する広葉樹は、わが国の他の地域に比較し、色彩から見ても特殊な材が多く、南方系特有の硬軟適宜の工芸的性質を持ち合せている。 本研究は南九州地域に生育している有用広葉樹を含めた未利用および用途未知の広葉樹をとりあげた。これらは材質に関するデータの蓄積は他の温暖帯地域に比較して少ない。したがって、各樹種の組織、物理的、機械的性質の特徴および用途に対する指標と製品開発を目的とした実験。 ・実験供試材は11樹種(アサグロ、キルキ、シラツグ、イノスギ、ムツナラビ、イタジイ、オキナワウラジロガシ、イジュ、タブノキ、ミヤコダラ、ハマセンダン、サイカチ)である。 ・実験結果 (1)木部繊維長は従来から報告されているように、15〜20年で1.3〜1.4mmに達する。 (2)生材含水率の横断面内の分布は髄付近で高く、樹皮に向って曲線状に減少する。比重のそれは平旦か、やゝ減少する。 (3)収縮率は文献値よりやや大きい値を示す樹種が多い。 (4)機械的性質は文献値より高い値を示すが、いずれの試験項目でも比重の増加と共に大となる。 (5)接着性能はアサグロが低いが他は本土産の広葉樹とほとんど変らない。 (6)乾燥スケジュールの試作を行った。
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