研究概要 |
今年度はメタン酸化能をもつ海洋細菌を分離培養する方法ならびに海水や海底土中のメタン濃度やその消長の測定法に関する検討を行った. 沿岸の特に汚濁して還元的になっている水域の海水や底土を試料に供した. メタン酸化細菌用培地として従来陸上土壌で用いられる培地を参考にし, それを海水用に改変すると同時に無機燐や窒素の種類や濃度, 各種微量金属, ビタミンなどの添加の組合せなどによって培地の検討を行った. 吸引瓶を培養容器とし, 上記培養液に試料を接種後, 気相を(空気):(メタン)=1:1になるようにセットして20°, 30°, 35°Cなどの温度で振とう培養した. 濁りのあらわれてきた培養は液量の1/10を新しい培養液に接種する方法で2〜3度集積培養をくり返すことによって増殖を確かめた. この一部を接種し混釈培養法によって寒天培地中に明瞭なコロニーを作らせることができた. この方法によって沿岸域の海水や底土中にメタン酸化能をもつ海洋細菌の存在を確認することができた. しかし, これらの細菌株は寒天培地上で継代培養を行う際に死滅してしまうかカビによる汚染を受け易いので, 現在保存培養に適当な方法を検討中である. また, 試験管を使ってMPN法を行うと底土や海水試料に存在するメタン酸化海洋細菌の菌数を推定することが可能である. 東京湾や三浦半島の油壷湾また相模湾のシロウリ貝群集域において底土や海水カラム中のメタン酸化細菌数の測定やその時間的変動について調査を始めつつある. 継代培養がうまくいくようになれば得られた細菌株それぞれの性状や種類, 増殖に対する諸環境因子の影響を調べてゆきたい. 今年度購入したガスクロマトグラフを用いて海水や底土中における現場のメタン濃度を測定する方法の検討と同時に, 試料を現場で培養しその間にメタンが酸化されて減少してゆく速度即ち現場での酸化活性を測定する方法も合せて検討中である.
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