ガス状メタンは油田や汚濁の進行した内湾底土のみならず、近年になって注目されている深海の湧水域に高濃度の存在が確認され、その起源や生態的意義について論議されている。このメタンを利用できる生物は、非常に特殊なグループの微生物に限られており一般に"メタノトロープ"と呼ばれている。これまで、淡水域、陸上などにおけるこの微生物の生態や、石油や天然ガスを利用するためのこれら微生物の生理については研究が行われてきたが、海洋における研究は非常に限られていた。そこで、海洋メタン酸化細菌の培養、計数法を確立し、さらにこれら細菌の生態的役割を調べる目的で研究を行った。まず沿岸の特に汚濁している水域の底土を用いてメタン酸化細菌の集積培養を行った。培地には有機物を含まない合成培地を用い、炭素源として気相にメタンガス:空気を1:1にした物を加えた。これを20^○Cあるいは37^○Cで1ヶ月集積培養後、新しい培地に接種して1ヶ月毎に3〜4回培養すると、かなりメタン酸化細菌が集積して得られることが確かめられた。この方法で油壷湾、大槌湾、東京湾、相模湾のシロウリ貝群害域の底土からメタン酸化細菌が培養できることが分かった。これらの細菌を固形培地上で純粋分離することを試みているが、現在の所まだうまくいっていない。そこで、多少他の細菌が混在はしているが、そき休止細胞を用いて、確かにメタンが利用されていることを確かめた。時間の経過とともにメタンガスと酸素は培養容器の中で減少してゆき、一方炭素ガスはそうかすることが全ての培養で確かめられた。更に、これら細菌の起薄切片と電子顕微鏡を用いて観察した所、メタン酸化細菌特有の膜構造II型が認められ、これら細菌の培養がうまくいっていることが確かめられた。沿岸域における基質としてのメタンの分布に関しても、ガスクロマトグラフを用いて調査を行った。
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