研究概要 |
本研究は東京湾内湾域を対象水域とし, こゝでの生態系モデルを作成し, これの資源管理への有用性を検討することを目的としている. 生態系モデルを用いて資源管理を行う対象種としては小型底曳網漁業の重要種であるシャコとマコガレイとした. 本年度はまず東京湾における各種漁業の漁獲統計を整理し, 魚種別漁獲量の経年変化を明らかにした. 対象種であるシャコは東京湾の環境悪化が最も著しかった昭和40年代半ばに一時漁獲が皆無になったが, その後復活し, 現在ではそれ以前を超す漁獲量となっている. 特に近年増加が目立ち, 昭和61年には年間漁獲量が1000トンのレベルとなっている. 近年の特徴は小型が多いことと冬期の漁獲が多いことで, 漁獲圧力が過剰になっていることが懸念される. 一方マコガレイも昭和40年代後半から漁獲量が増加したが, 50年代半ばにやゝ低迷した. その後変動はあるが, かなり高い漁獲水準を保っている. 本種は夏期に漁獲量が多いが, 近年春にも小さいピークが見られる. この両種については産卵・成長・成熟等の調査も行い, 生活史について予備的にまとめた. また試験底曳による分布調査も行っているが, この結果からはシャコ・マコガレイとも分布が近年拡大している傾向が認められる. この試験底曳で得られた標本について食性調査も行い, まだ十分ではないが, 食物連鎖の構造を把握することに努めている. このように今年度は東京湾の生態系の骨格構造について検討するための基礎資料を蓄積し, 一部解析を行った. なお, 生態系の現在の状態を検討するために漁獲物に流れた基礎生産量の試算も多多良モデルを用いて行った. 来年度はさらに必要な情報の蓄積に努めるとともに, これらの情報に基づいて東京湾の生態系モデルを構築し, その中でのシャコ, マコガレイ資源の動態を検討する. その際, モデルをこの2種を中心としていかに簡略化できるかが, 有用性を決める鍵となろう.
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