本研究は漁獲対象資源を含む生態系の挙動をモデル的に解析し、複数種を同時に考える資源管理に必要な基礎的知見を得ることを目的としている。対象水域は従来から研究を行っている東京湾とし、管理の対象としては小型底曳網漁業の重要種であるシャコとマコガレイとした。まずシャコとマコガレイそれぞれの資源について個別に検討した。本年度はシャコについては年齢・成長・産卵などの生活史に関する知見をまとめた。シャコの産卵期は4〜8月で、4・5月と7・8月の2回、産卵盛期がある。最初のピークは2歳以上の個体が主であり、後のピークには1歳の個体の寄与が大きい。4〜8月に産れた稚仔のうち早いものはその年の秋(11月頃)から、また遅いものは翌年の春(4・5月)に漁獲されるようになる。近年、漁獲は周年に及び、漁獲のピークもあまり明瞭でなくなってきた。漁獲量も増えている。寿命はほぼ2年半と考えられる。マコガレイについては産卵期は12〜2月で、5・6月頃1.4歳ほどで網にかかるようになるが、出荷制限サイズに達するのは夏、1.8歳ほどである。年齢査定と銘柄が漁獲量を基に、年齢別の漁獲尾数を求め、マルチコホート解析を行い、漁獲係数、資源量を推定した。自然死亡係数は寿命から推定したが、雌雄で異なるので、解析は雌雄別に行った。1980〜'87年の加入完了後の総資源尾数は350〜920万尾と推定された。毎年の漁獲率はかなり高い。このほか東京湾内湾の生態系の機能の経年変化を吟味する一環として、基礎生産と漁業生産の関係の考察も進めた。これによれば、富栄養化のため基礎生産は非常に増大したが、これが必ずしも漁業生産に流れず、効率が大きく低下されたことが示唆される。現在1988年の漁獲統計も加え、試験底曳結果、各種の食性調査に基づき、東京湾内湾の生態系の骨格構造を検討中である。この後にシャコとマコガレイのこの相互関係も考慮した資源管理について考察を進める。
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