今年度は全般的に極めて良好な飼育成績を納めることができたため、昨年度予定していた体色異常と外部形態との関連性について解析した。仔魚の変態開始以前より、変態完了後まで発育段階をおって標本を採取し、正常群と白化群の仔魚期および稚魚期における外部形態を比較した。外部形態としては、全長、標準体長、こう門前長、頭長、眼径、上顎長、体高、背鰭伸長鰭条長、左側胸鰭長、右側胸鰭長、左眼移動角度および右眼移動角度を測定した。測定値はそれぞれの飼育群および発育段階によって整理し、統計的な比較検討をおこなった。有為水準5%でみると、変態始動期では半数以上の形質において両者は等しかった。変態中期にいたると差がないとみなせる形質が増加したが、変態後期および完了期においては再び多くの形質で白化群のほうが大きくなった。すべての発育段階を通じて、眼径や変態のひとつの指標である両眼の移動角度はほとんど相違が認められなかったが、変態のもうひとつの指標である背鰭伸長鰭条長は変態始動期を除いて白化群が大きい値を示した。全体的に正常群のほうが白化群に比較して小型であるため、標準体長を基準にした各計測形質の相対成長を求めても、ほとんど全ての場合において正常群のほうが白化群に比較して屈曲点が左方向にずれていた。これらのことは、正常群に給餌した天然動物プランクトンは白化群に給餌したブラジル産アルテミアやワムシに比較して、ヒラメ仔魚が摂餌により多くのエネルギーを消費するため、正常群の仔魚のサイズが小型化したものであろうと推察される。従ってヒラメの場合には、体色異常が変態過程における外部形態の変化にはそれほど影響しないと考えられた。
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