アユの血清中の抗原に対するモノクローナル抗体を作製し、血清中の抗原スペタトルを作製するとともに、抗体など主要な免疫活性成分の検出と定量を行うことを目的とした。 アユの血清を免疫抗原としてマウスに接種し、その脾臓から取り出したリンパ球とマウスミエローマ細胞とのハイブリドーマを、アユ血清で感作したポリスチレンビーズ(PSB)あるいはポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)後、マウスIgGに対するペルオキシダーゼ標識ウサギ抗体を用いた酵素免疫法(ELISA)によりリスクリーニングとクローニングを行って、繰り返し作製した。また、アユ抗体に対するハイブリドーマの作製には、vibrio anguillarumで免疫したアユの血清およびV.anguillarumのLPSで感作したPSBを用いて同様に行った。検査材料には免疫および非免疫アユ成魚の血清、同臓器、人工種苗生産の過程で得られたアユの卵および仔稚魚を用いた。これらの材料を超音波処理等を行ったのち、PAGEとニトロセルロース膜へのブロッティングあるいは感作PSBを用いてELISAにより、各抗原成分の定性及び定量を行った。 その結果、アユ血清成分に対する12種類(A〜L)のモノクローナル抗体を作製することができた。このうち、1種類(A)はアユの抗体に対するものであると考えられた。A〜Lのモノクローナル抗体に反応する抗原(a〜l)のうち、卵にはD〜eおよびlが、仔稚魚のホモジネートと成魚の血清の試科中にはa〜lの12種類の抗原が認められた。免疫にともなって抗原aが増加したが、その他の成分はほとんど増加しなかった。成魚の腎臓、脾臓、肝臓および血清について12抗原の比較を行ったところ、量的な差異は認められたが、いずれの抗原も検出された。今後はさらに多くの成分に対するモノクローナル抗体を作製し、スペクトルの充実を進める。
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