魚類病原菌より特定遺伝子をクローン化し、それをプローブとしたハイブリダイゼーション法による魚類病原菌Pasteurella piscicidaおよびVibrie anguillarumの簡易迅速同定法の開発を目的とした。 1.P.piscicidaよりクローン化したDNA断片の長さは692bPで、そのGC含量は、39.2%であった。このクローン断片は他の魚病細菌あるいは近縁種と考えられているP.multocida、P.haemolyticus等と相同性をまったく示さず、P.piscicidaのみ有する特定遺伝子であることが明らかとなった。 2.V.anguillarumより得られたDNA断片は562bPで、GC含量は38.8%であった。この断片は他のVibrio種、V.alginolyticus、V.parahaemolyticus等の16種および他の魚類病原菌とはハイブリッドを形成せず、V.anguillarum特定の遺伝子であることが明らかとなった。 3.P.piscicidaよりクローン化した692bP断片をPhotobiotinで標識し、ハイブリダイゼーションを行ったところ、P.piscicidaとのみハイブリッドの形成が確認できた。DNA3.9ng量までハイブリッドの形成が認められ、^<32>Pで標識したプローブのハイブリッドの検出限界値と変わらなかった。 4.細菌性類結節症に罹病したハマチの腎臓あるいは脾臓の血液をニトロセルロースフィルターに直接塗沫し、P.piscicidaの特定遺伝子プローブとハイブリダイゼーションを行ったところフィルター上でハイブリッドの形成が認められた。 以上、P.piscicidaおよびV.anguillarumより特定遺伝子をクローン化し、それを^<32>Pのみならずphotobiotinで標識しプローブとして用いたところ、それ自身の菌とのみハイブリッドを形成した。さらに、分離培地を用いなくても臓器より直接ニトロセルロースフィルターに塗沫し、プローブハイブリダイゼーションを行うことにより原因菌の検出が可能となった。
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