研究概要 |
駿河湾奥部の興津シラス漁場で採集した全長4.4-45.2mmのアカハゼ仔魚2277個体を用いて, 外部形態の発達と食性について検討した結果, 次のような知見が得られた. 1.アカハゼ仔魚の第1背鰭と臀鰭, 尾鰭は全長10mm付近から整い始める. また, ハゼ類特有の腹鰭の吸盤形成は, 全長20mm付近から始まり, このころから底生生活に移るものと考えた. 2.消化管内容物調査で, 全長8mm以下の小さいアカハゼ仔魚は小形のnaupliusを, 全長10mmころから比較的大きいParacalanus, Acartiaなどを, また全長20mm以上になると大型のCalanusや尾虫類を主体に摂餌する. これらアカハゼ仔魚の飼料生物は, いずれもカタクチシラスの主要飼料生物と一致している. 3.アカハゼ仔魚の口径と飼料生物の体幅との関係を検討した結果, 全長10mm級仔魚では口径の約17.7%全長20mm級仔魚では口径の約8.8%, 全長30mm級仔魚では口径の約5.9%に相当するものを最も多く摂餌する. 4.アカハゼ仔魚の摂餌状態を摂餌量指数{(消化管内容物重量/体重)・100}でみると, 仔魚の大きさをとわず, 0.29以下の低摂餌量指数のところに集中出現し, 余り摂餌状態が良いとは言えなかった. 特に, その傾向は形態が未発達の全長8mm以下の仔魚で顕著であった. ただ, 高摂餌量指数1.70以上の出現割合は, 仔魚の成長に伴って特に全長10mmと20mmにかけて増加する. 5.以上から, アカハゼ仔魚の外部形態の発達と食性, 特に全長10mmと20mmでの摂餌の向上は, 鰭形成および口径の拡大と密接な関係にあると思われる. また, アカハゼ仔魚と同一時空間に生息するイワシ類シラスとが, 種類, 大きさとも同じ飼料生物を主要飼料生物にしていることからみて, 飼料生物をめぐっての競合が生じていると考えられる.
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