昭和63年度の研究結果は下記の通りである。 (1).アカハゼ仔魚はカタクチシラスと同様に、淡水の混合率が3.2ー11.6%の河川水の影響が大きい水深10m付近の海底直上を主な生息域としている。(2).アカハゼ仔魚の生息場所の出現動物プランクトンはかいあし類のnauplius、Acartia、Noctilucaなど33種類であった。それらの中ではかいあし類が66.8ー87.2%を占め、中でも体長0.60mm未満のものが主体を占めている。(3).アカハゼ仔魚は全長約10mmで上下顎が堅牢になり、全長20mm付近で第一背鰭を除く各鰭の条数が成魚とほぼ同数になる。(4).アカハゼ仔魚はかいあし類のnauplius幼生、ParacalanusやCalanusなどを主餌料生物としている。それら主餌料生物の大きさは、全長10mm以下では、体長0.40mm未満のものである。全長10mmを超えると体長0.60ー0.80mmのものを主に摂餌する。この特性は全長20mmより大きくなっても変わらないが、体長1.50mm以上のものを多く摂餌する。(5).アカハゼ仔魚は餌料生物に対して大きさ選択を行い、同じかいあし類でも、体長0.60mm以上のより大きなものを好んで摂餌する特性を有している。この摂餌特性は摂餌に要するエネルギー消耗を少なくするのに寄与しているとみられる。(6).アカハゼ仔魚の捕食率は成長に伴って増加するが、その増大率は一定でなく、外部形態の変化が著しくなる全長10mmおよび20mm付近を境にして変化する。(8).アカハゼ仔魚の消化管内物重量は、成長に伴い指数関数的に増大するが、平均摂餌量指数は3前後でほぼ一定となる。このことからアカハゼ仔魚は成長に伴って多量に摂餌するが、体の大きさに見合うだけの量しか摂餌していない。(9).アカハゼ仔魚とイワシ類シラスとは生息環境および摂餌特性が同様であることから、両種間には、餌料生物の密度によっては、餌料生物をめぐっての競合が生じる可能性がある。
|