本研究ではアカハゼ仔魚とイワシ類シラスとの相互関係を究明するため、アカハゼ仔魚の消化管内容物を種類組成、体長組成、重量組成について調べた。次に、消化管内容物と漁場プランクトンとの相互関係について検討し、アカハゼ仔魚の摂餌特性を明らかにした。最後に、アカハゼ仔魚とカタクチシラスとの摂餌特性の比較検討を行い、餌料生物を巡っての競合について考察した。 1.アカハゼ仔魚を主体とするハゼ類仔魚は、日中においては、イワシ類シラスと同様、水深10m前後の海底直上付近に生息する。2.本シラス漁場におけるアカハゼとマハゼ仔魚は、15.0〜16.5℃の比較的水温の低い4月から5月中旬に多く出現し、18.0〜19.6℃の水温が高い5月中旬以降は減少する。3.アカハゼ仔魚は動物プランクトンを餌料生物にする。その中でも全長8.0mm以下の階級では、かいあし類のnauplius幼生を、全長8.1〜24.0mm階級のものはParacalanus、Acartiaを主に摂餌する。全長24mm級を越えるとParacalanus、Acartiaに加えてCorycaeus、Appendicularia、Calanusの3種類、中でもCalanusを多量に摂餌するようになる。4.アカハゼ仔魚の消化管内容物と漁場プランクトンとの間には、種類・大きさをとわず著しい差が生じていた。この差はアカハゼ仔魚がプランクトンに対して選択摂餌を行った結果である。この選択摂餌は、種類選択ではなく、大きさ選択である。すなわち、アカハゼ仔魚は、かいあし類を主餌料生物にするが、その中でも体長0.60〜0.69mm未満の小さいものよりは、それ以上の比較的大きいものを好んで摂餌する特性を有している。5.アカハゼ仔魚とイワシ類シラスとは、生息環境および摂餌特性が同様であることから、アカハゼやマハゼなどのハゼ類仔魚が多くなる春季に、マシラス・カタクチシラスとアカハゼ・マハゼ仔魚との間で摂餌競合が生じているものと考えた。
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