研究概要 |
東京湾・相模湾・油壷湾および沖縄沖の海水・海底堆積, また油壷湾の海藻(アラメ・カジメ・アオサ)から細菌を分離し, 分離した細菌約400株について植物ホルモン, サイトカイニンおよびオーキシン(インドール酢酸)の産生能をスクリーニングした. 試験菌株はPPES-II培地に培養し, 培養濾液から植物ホルモンを抽出し, 部分的に精製したのち, サイトカイニンについてはヒモゲイトウの幼根を用いるバイオアッセイ法によって, またインドール酢酸は酵素免疫測定法(ELISA法)によって検出ならびに定量を行った. その結果, 試験した菌株のうち5〜75%がサイトカイニンを, また20〜80%がオーキシンを産生することが分った. 海水から分離した菌株よりも海底堆積および海藻から分離した菌株に植物ホルモン産生株の比率が高かった. とくに海藻由来の菌株にはオーキシン産生菌株が多かった. 海洋から植物ホルモン産生細菌が分離されたのは本研究がはじめてである. 植物ホルモン産生菌株について, ほぼ属の段階での分類を行った結果, ホルモン産生菌株は特定の細菌種に限局されるものではなく, Vibrio, Pseudomonas, Flavobacterium, Alteromonasなど多くの属の細菌がサイトカイニン, オーキシンを産生することが分った. 安定にサイトカイニンを産生するVibrio属細菌の1株について, その培養からサイトカイニンを抽出し, 精製し, 高速液体クロマトグラフ法およびGC-MS分析法によって同定したところ, この菌株が産生するサイトカイニンはイソペンテニルアデニンおよびイソペンテニルアデノシンであることが明らかになった.
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