研究概要 |
イバラガニモドキ, タラバガニ, ハナサキガニ, エゾイバラガニ, ニホンハラガニ, ベニズワイ, ガザミ, ジヤノメガザミ, イシガニ, オオエンコウガニ, ケガニ, およびイセエビの肝臓抽出液中の各種プロテイナーゼの活性と, それらの構成をしらべ, さらに一部の酵素を分離して性質をしらべた. いずれの種類についても, ペプシン, キモトリプシン, カルボキシペプチダーゼβの活性は検出されなかった. pH7.5付近で最も大きな活性を示すトリプシン様酵素の活性が最も強く, またコラーゲン分解活性も明瞭に認められた. プロティナーゼ活性をもつタンパク質は, ゲルろ過で少なくとも2つ以上の画分に別けられた. その1つは分子量約24000, もう1つは約11000と推定された. 後者は他の甲殻類から見出されているいわゆる低分子プロテイナーゼに相当すると思われる. トリプシン活性とコラゲナーゼ活性がこれら2つのタンパク質画分に明瞭に認められる場合とそうでない場合があり, 動物の種類によりプロテイナーゼ構成に違いのあることが示唆された. しかし, すでにシオマネキの肝臓の主なプロティナーゼがコラゲナーゼ活性を伴うトリプシン様酵素であることが明かにされており, 本研究で観察した12種の甲殻類でも, 同様の酵素が消化作用に中心的役割を担っているものと考えられる. ロイシンアミノペプチダーゼとカルボキシペプチダーゼAの活性も検出されたが, その相対的活性は極めて低かった. さらに, 分子量の異なる2種のプロテイナーゼの分離精製と, それらの酵素のインシュリン, コラーゲン, およびミオシンに対する作用機構の追究, および種々の酵素化学的特性の解明について研究を継続している.
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