ケガニとイセエビの肝膵臓をアセトンで処理して脱脂乾燥粉末を得た。それを原材料として酵素を抽出し、硫酸アンモニウムによる塩折、セフアデックスG-75によるゲル濾過、セファロースCL-6Bによるイオン交換クロマトグラフィーなどによってプロテアーゼの分離精製を行った。 ゲル濾過で複数の酵素の存在がみられたが、そのうちのトリプシン活性とコラゲナーゼ活性が共に高い主画分をイオン交換クロマトグラフにかけて、さらに別れた2つの画分について、種々の酵素学的特性をしらべた。 いずれの画分もトリプシン作用とコラゲナーゼ作用を有していた。この酵素はしたがって、シオマネキやザリガニ肝臓から分離されたプロテアーゼと同じタイプの酵素と考えられる。 しかし、トリプシン作用の至適pHは8.0であり一方コラゲナーゼ活性のそれは7.0付近を示し、同一タンパクによる二種の酵素作用としても、その作用機構が異なるものであることを示唆している。 さらに、DFP、アンチパイン、ロイペプチン、大豆トリプシンインヒビターなどが、トリプシン作用をほぼ完全に阻害するのに対し、これらはコラゲナーゼ活性を完全に抑えない点も上記のことを支持する。しかし酵素の画分によりこれらの物質によるコラゲナーゼの抑制の様相も微妙に異なっているので、このタイプの酵素の多様性が想定される。 酸可溶性コラーゲンにこの酵素を作用させた時の分解パターンは明らかにβ→鎖→α→鎖→低分子フラグメントという経過を辿るものであった。
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