研究概要 |
ケガニ,オオエンコウガニ、タラバガニ、ハナサキガニ、ニホンイバラガニ、イバラガニモドキ、エゾイバラガニ、ベニズワイガニ、およびイセエビの肝膵臓の各種プロテアーゼ活性の分布と、それらの酵素学的諸性状について観察した。 いずれの種でも、強いトリプシン活性と明瞭なコラゲナーゼ活性が認められた。種によっては、弱いながらもロイシンアミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼの活性が観察されたが、キモトリプシン活性は全く検出されなかった。なお、トリプシンも含めて、プロテアーゼのチモーゲンの存在は認められなかった。 ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー等によりケガニとイセエビのプロテアーゼの分離精製を試みた。強いトリプシン活性を有する複数の酵素が分画され、それらはまたコラーゲン分解活性も示した。トリプシン作用の至適pHは哺乳動物のトリプシンと同様に8.0付近であったが、コラーゲン分解活性の至適pHは7.0付近にみられた。 各種インヒビターに対する挙動をみると、画分により異なる点があるが、トリプシン作用はすべての画分でDFPで完全に阻害された。またアンチパイン、ロイペプチン、大豆トリプシンインヒビター、TLCKなどもトリプシン作用を完全又は強く阻害した。しかしコラゲナーゼ作用はこれらの阻害剤で必ずしも完全に阻害されなかった。 酸可溶性コラーゲンにこれらの酵素を作用させると、βー鎖の減少に伴うαー鎖の一時的増加を経て、さらにαー鎖の分解が起った。 このようなコラーゲン分解作用をもつトリプシン様酵素は、甲殻類の食物消化に重要な役割を果しているものと思われる。魚類幽門垂のプロテアーゼについても比較検討を進めている。
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