研究概要 |
7種の不揮発性アミン即ちプトレシン, カダベリン, アグマチン, チラミン, トリプタミン, スペルミジン, ヒスタミンは高速液体クロマトグラフ(LC-6Aポリアミン分析システム, Shim pack CLC-ODSカラム)により, 分離後, オルトフタールアルデヒド及びメルカプトエタノールを反応試薬としてポストラベルにより生成する初蛍光体を検出することによって同時定量が可能であった. ところで, 我が国ではイカの利用や消費が高いにもかかわらず, 魚類に比較して適当な鮮度判定指標が見い出されていない. そこで, 不揮発性アミンがイカの鮮度指標として有効であるかどうかを検討してみた. 試料として極めて新鮮な氷蔵スルメイカを用い, 内臓, 皮を除去後, 外套部の筋肉を0°C, 3.5°C, 15°Cに貯蔵した. 経時的に不揮発性アミン, 揮発性塩基窒素(VBN), pH及び官能判定を行なった. 初期腐敗に達するまでの日数は0°Cで8日, 3.5°Cで7日, 15°Cで0.5日であった. アグマチンは極めて新鮮な時点から微量検出され, 貯蔵中に増加し, 初期腐敗時に30mg/100gを越え, 腐敗で約40g/100gに達した. プトレシンは新鮮な状態では検出されず, 微量検出された時点は初期腐敗時に相当する. 腐敗するとプトレシンは著しく増加し, 腐敗臭への関与は大きいと考えられる. カダベリン, チラミンは初期腐敗以降に生成され, 腐敗が進むとかなり多量検出された. トリプタミンは量的には少ないが, 新鮮時から検出され, その後漸増した. pHは新鮮な状態ではほとんど変化がみられず, 初期腐敗の時点で0.1〜0.3上昇した. 一方, VBNは貯蔵中に増加がみられるが, 初期腐敗時に17〜30mg/100gと範囲が広く, 鮮度の参考にはなるが, 指標としてあまり適当ではない. 結局, イカの鮮度判定としてはアグマチンが最も適しており, これにプトレシン及びpHを補助的に用いるとさらに正確な鮮度判定のできることがわかった.
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