不揮発性アミン即ちプトレシン(Put)、アグマチン(Agm)、カダベリン、チラミン、トリプタミンを螢光検出器付高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析すると相互に良く分離し、同時定量可能であった。水産無脊椎動物肉のエキス中に高濃度含まれるアルギニンが脱炭酸されて生ずるAgmはガスクロマトグラフでは分析不可能であり、HPLCによってのみ定量可能であった。代表的な水産無脊椎動物であるスルメイカ、ホタテガイ、クルマエビを試料とし、貯蔵中の不揮発性アミンの消長を調べた結果、スルメイカの場合Agmが鮮度判定指標として最適であった。即ち、極めて新鮮肉においても微量検出され、貯蔵中に増加し、初期腐敗時に30mg/100gを越え、腐敗状態では40mg/100gに達した。また、Agmの増加曲線は細菌の増殖曲線と類似していた。さらにPutは新鮮肉では検出されず、初期腐敗時に少量(1mg/100g以下)検出されることから、Putを補助的な鮮度指標として用いると、さらに正確にイカの鮮度判定の出来ることがわかった。従来から鮮度判定の難しかったイカにおいてAgmやPutを用いて鮮度判定が可能である意義は大きい。次にホタテガイの場合、Putが鮮度判定指標として適していた。新鮮肉には検出されないか又は微量であるが、初期腐敗で0.5〜0.7mg/100g検出され、腐敗では2.1mg/100gを越えた。クルマエビの場合もPutが指標として使えた。新鮮肉では検出されず、初期腐敗で少量(1mg/100g以下)検出され、腐敗すると著しく増加した。初期腐敗時にVBNは30mg/100g、K値は30%であった。最後に、抗菌剤クロラムフェニコール添加実験により、貯蔵中に生成される不揮発性アミンは細菌の脱炭酸酵素によって産生され、筋肉の酵素は関与しないことが明らかとなった。また、スルメイカの場合、全生菌数が10^3/gのオーダーで、ホタテガイでは10^3/g〜10^4/gのオーダーで微量ないしは少量の不揮発性アミンを産生することが証明された。
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