研究概要 |
魚類を含め, 脊椎動物の主要なコラーゲン分子種(I型)は2本のα1と1本のα2からなる(α1)_2α2のサブユニット組成を有することが, 古く1963年に見い出されている. 筆者らは最近, 硬骨魚類に属する真骨類のコラーゲンが多くの場合, 他の脊椎動物に例をみないユニークな第3のα鎖(α3)を含み, α1α2α3ヘテロ分子として存在することを明らかにした. そこで本研究では真骨類以外の硬骨魚類として肺魚類と全骨類をとりあげ, 真皮I型コラーゲンのサブユニット組成を明らかにし, α3鎖の分布を魚類の系統発生の面から調べた. 1. 南米産肺魚と北米産ロングノーズガー(全骨類)の真皮から0.5M酢酸で可溶性コラーゲンを抽出し, NaClによる分別沈澱法でI型コラーゲンを単離することができた. なお, ガーは真皮と鱗を分離することが困難であり, 鱗の付いたままの真皮を試料に用いた. 2. こうして調製したコラーゲンの電気泳動分析とアミノ酸分析を行ったところ, 肺魚とガーのコラーゲンは共に典型的なI型コラーゲンの泳動図とアミノ酸組成を示し, 高度に精製された標品であることが判明した. 特に肺魚のコラーゲンは2種のα鎖(α1とα2)の移動度に大きな差があり, さらにLysの水酸化で生じるHylに富むことが特徴的であった. 3. 次にコラーゲンを熱変性の後, CM-セルロースクロマトグラフィーによってサブユニット鎖を分画した. 肺魚とガーのコラーゲンは共にα1とα2のみを含む(α1)_2α2のサブユニット組成を有し, 多くの真骨類コラーゲンに存在するα3は検出されなかった. 以上の結果, α3鎖をコードしているα3遺伝子は恐らく肺魚類と全骨類には存在せず, 真骨類に特有のものと考えられた. 今後, 軟質類のチョウザメを調べる予定である.
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