哺乳類と鳥類の真皮コラーゲンは線維性のI型を主成分とし、分子量約10万の2種のα鎖、α1とα2、が(α1)_2α2ヘテロ分子を形成している。一方、ほとんどの硬骨魚類を含む真骨類の真皮I型コラーゲンは多くの場合、α1とα2の他にα3とよばれる第3のα鎖を含み、これらがユニークなα1α2α3ヘテロ分子を形成している。本研究は真骨類以外の硬骨魚類として軟質類のチョウザメをとりあげ、その真皮I型コラーゲンにおけるα3鎖の有無及び分子のサブユニット組成を調べた。 カルフォルニオ産のシロチョウザメ及びソ連産のベスター(オオチョウザメとコチョウザメの雑種)から真皮を調整し、0.5M酢酸で抽出したコラーゲンNaClによる分別沈澱に付してI型コラーゲンを単離した。これらチョウザメのコラーゲンをSDS-電気永動法で分析すると、α1とα2に相当する2種のサプユニットのみが検出された。しかし、熱変したコラーゲンをCM-セルロースカラムで分画すると、α1の直後に第3のα鎖(α3)が認められた。このα3はα1に比べて、電気永動的には同じ挙動を示すが、一次構造を異にするサブユニットであった。そして、この真皮i型コラーゲンは3種の異なるα鎖からなり、α1α2α3ヘテロ分子として存在することが判明した。アミノ酸組成の点では、コラーゲンに特有のヒドロキシリジンが10〜11残基/1000を占め、これまでに報告された真骨類の真皮I型コラーゲンに比べて多く含まれることが特徴的であった。 従来の研究結果から、魚類I型コラーゲンのα3はα1から分化したもので、硬骨魚類に属する真骨類に固有のサブユニットと考えられていた。本研究の結果、α3は真骨類のみならず軟質類のチョウザメにも存在し、硬骨魚類に汎ま分布することが明らかになった。
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