昭和63年度は、秋田県および他県の事例によりながら、田畑輪換を含めた新しい土地利用方式の確立と農業生産組織活動がいかなるかかわり合いを持ちながら推進されているかについて調査研究した。その結果得られた知見はつぎのとおりである。 1.転作田を団地化し、2〜3年サイクルのブロックローテーションにより田畑輪換に取り組んでいる事例は、いまだ少ない。 2.その理由は、高額の転作奨励補助金に動機づけられた転作団地が大半を占めているからである。 3.そうした中にあって、秋田県のA事例では、ムラぐるみの生産組織活動に取り組みながら、転作についてもブロックローテーションに取り組んでいた。 4.B事例では、集落の合意に基づいてつくられた転作団地を特定の生産組織が理一切を受託することにより合理的利用がはかられていた。 5.C事例では、新しい生産組織がつくられたことにより、ブロックローテーションが可能になろうとしていた。 6.広島県のD事例では、これまでおこなわれてきた田畑輪換を維持するためには、生産組織を再編成しなければならないという課題をかかえていた。 7.山口県のE事例では、有限会社が新しい土地利用方式の確立に大きくかかわろうとしていた。 8.千葉県のF事例では、土地改良区が中核となって大規模な田畑輪換がおこなわれていた。 9.以上のように、新しい土地利用方式の確立はそれを担う主体の形成と密接に関連しているため、次年度はこれまでの調査を踏えながら、その点を理論的に整理してみたい。
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