昨年度と同様に岩手県内の25ケ所より試料を採取し、N_2ガス吸着による吸着実験を行った。試料は、堆積岩、火成岩、深成岩等の地質的成因の明確な土とした。これらの試料の細粒分について液性限界、塑性限界、pF3.0、pF4.2水分を測定し、吸着実験により得られた比表面積、細孔容積との相関について調べた。得られた知見は以下のとおりである。 1.クランストン・インクレイ法とモデル無し法による細孔容積は、それらが対象とする共通領域の細孔では非常に良く一致した。これは多分子層吸着厚さを牧島・境野らの式を用いて共通値としたことと、理論の異なる両式のそれぞれの正しさによるものと考えられた。 2.今年度の試料群と昨年度と今年度の試料を合計した試料群は、いずれも液性限界、塑性限界、pF3.0、pF4.2水分と比表面積、細孔容積との関係において高い相関を示した。このことは、一般に見られる鉱質土壌にあっては、風化の程度(比表面積、細孔分布)に土の物理性が比例することを示唆するものである。この点については、細孔容積の値がこれらの物理性の発現要因とどのような関係にあるのかを明らかにする必要があり、目下、細孔のモデルを平板モデルとして考えた場合の細孔分布について検討を行っている。 3.土の粒度組成は比表面積や物理性の第一の発現要因と考えられるが、その粒度試験に問題点が多い。ある種の高分子分散剤と超音波処理の適用による完全分散法について実験を行い、ほとんどの試料について良結果を得た。 4.時間の制約上、当初計画した有機質土に対する実験を行うことが出来なかった。
|