今年度は、昨年度と一昨年度に岩手県内から採取した試料についての補足実験を行い、これまでのデ-タの解析を行った。解析結果についての検討から次のような知見が得られた。 1.細孔モデルとして円筒モデルを考えた場合のCranston Inkley法とモデル無し法の結果、平板モデルと考えた場合のInnes法とモデル無し法の結果は、いずれの場合も、それぞれの計算細孔直径を揃えた場合にはほぼ同一の値となることが明らかとなった。 2.岩手県内全域から採取した約50の試料についての比表面積の測定結果は、420μmの土の場合、母材の種類に関わらず10〜50m^2/gの範囲に分布した。また、細孔容積の値も同じく0.01〜0.06ml/gの範囲に分布した。但し、火山碎屑物の場合には比表面積で110m^2/g、細孔容積で0.11ml/gを超すものがあり、いわゆる火山灰土の微細構造の特徴がみられた。 3.N_2ガスによる土の微細構造の測定では、測定される孔隙の大きさは最大で0.1μm程度であるので、きわめて小さな孔隙を測定していることになるが、BET法による比表面積と細孔容積解析から求まる比表面積の比較からこれらの微細な孔隙を造る微小粘土粒子間あるいは大粒子内の内部孔隙の側面積の占める表面積の割合は約8割強であることが明らかとなった。 4.比表面積と液性限界、塑性限界、pF水分等の土の物理性との間には高い相関がみられた。土の物理性の発現は土粒子表面の水膜厚さに関わる問題と考えられるが、比表面積と水膜厚さの関係式が指数関数式で表されることの物理的意味について、fraction別比表面積の測定結果等の知見からこれを説明した。
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