東郷湖に流入する河川のうち埴見川、宮内川の上流にある埴見と宮内の両地区に集落排水処理場が建設され、その処理水は、それぞれ両河川に放流されている。本研究では、これらの放流水が下流の東郷湖に及ぼす影響を調査研究することを目的としている。そこで河川への放流位置、その上・下流、東郷湖中で最も汚染されていると思われる点、東郷湖と日本海を結ぶ橋津川の最上流部の橋津橋の合計8点で定期的に採水し、その水を分析した。本年度は昨年度の調査に、東郷湖内に船を出して、湖の塩分濃度、電気伝導度などの測定・調査を加えた。以下に、その結果を報告する。BOD:放流水の水質は20ppm以下であるが、宮内処理場の水質の方が埴見処理場よりも低い。他方、東郷湖のそれは5ppm前後であった。COD:埴見処理場の水質は20ppm前後、宮内のそれは10ppm以下であった。I-N:2処理場の水質は共に20ppm前後であった。東郷湖内および橋津川では0.1〜4ppmを示した。I-P:宮内処理場の処理水質は6ppm、埴見処理場のそれは2ppmと低い値であった。これは埴見処理場に設置した鉄製回転円板における脱リン効果によるものである。l^-:l^-は東郷湖の中心にある温泉源近くと橋津川近くで高い値を示した。その他の指標pH、DO、SSについてはBOD、COD、T-N、T-Pと同様な傾向が見られた。以上のことをまとめると、有機物汚染指標とされるBOD、CODの測定値は埴見、宮内両処理場とも基準値の20ppmを満足していた。しかし現在の東郷湖は湖沼に関する環境基準によるとBに分類される。決して良質の水とは言えない。これ以上、水質が悪化しないためにも、東郷湖に流入す大河川である舎人川や東郷川流域の集落排水事業を行うことが急務とされる。放流水の基準も有機物量のみでなくリンや窒素をも含めた、さらに厳しいものとし、東郷湖が富栄養化しないための施策を講じる必要があると考える。
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