研究概要 |
現在大規模農業水利事業が実施されている2地区を対象として, 土地, 水資源を巡る利用再編の状況について調査研究を進め, 次のような結果を得た. 〔吉井川下流地域〕吉井川地域はわが国でも最も古くから水田開発が行われた地域に属し, 近世初頭にも大規模な水利再編が行われた経験を持つ地域である. これは主として, 下流干拓地の用水源確保と舟運を目的として, 実施された総合開発であった. この結果現在に見る農業用水を中心とする下流優先の水利慣行が形成された. しかし, 都市的土地利用が進展し, 混住化の進行に伴って現在地区排水を中心とする下流優先の水利秩序が形成されつつあり, 国営土地改良事業はそのための基盤整備として位置づけられる. 〔児島湖周辺地域〕児島湾は古くから干拓によって土地開発が進められた地域として有名である. 明治以降には西欧の近代的土木技術を背景として, 商業資本や国の公共投資によって組織的な干拓が進められた. しかし, 都市的土地利用が進展し, 瀬戸大橋の開通によって, この傾向は一層激しくなるものと予想される. そのために新しく農業水利事業が着手され, 土地改良事業を軸に, 児島湖周辺の基盤整備が実施されつつある. 瀬戸内地域は, 平野の発達が悪く, また水資源についてもわが国では有数の逼迫地域であり, 古くから農業的な土地と水資源は極限的利用が図られてきている. しかしながら, 近年, 人口と資産が沿岸地域に集積し, その様な資源の農業的利用体系への大きな圧力となっており, この地域では, 現在まさにこれら資源の利用体系の質的転換点を迎えようとしている. 先進的な一部地域では, 既に都市的利用体系へ向けての再編が進みつつあるが, これらは土地改良事業制度を軸に再編整備が進められていることが分かった. 今後, 土地改良事業制度を活用したそれら資源の利用体系の再編成が, 益々重要となることが結論づけられた.
|