研究概要 |
水温センサー・データロガーを用いて7月初旬より弁天池(かんがい用)と永瀬ダム湖における測定に着手した. 水温躍層を対象とするため期間が制限されるので, 本年度は永瀬ダム湖を主とし, 弁天池は2回だけ測定した. 弁天池では湖中に突出た浮桟橋を利用した直角三角形の各頂点で水温躍層内の水深0.5, 1.0および1.5mの3点でΔt=30秒で水温変動を測定し, 水深1mで周期約17.4分, 温度差1.8°C, 波高25〜30cmの明確な内部波を検出した. 3点におけるピーク遅れ時間から波速を求めたがΔtが過大で精度が悪いため, 各点間のクロスコレログラムにより求めた. その結果, 波動は卓越風の方向(池の中心の方向)から波速約2.8cm/secで伝播してくることがわかった. 風向・風速も同時に測定したが10分間平均値と最大値であるためか, この内部波の発生原因と特定できるものは見当らない. 次年度にさらに調査・検討する計画である. 永瀬ダム湖では一辺約2mの木製正三角形枠を組み, 湖面に浮べて各頂点から水温センサーを垂下し, 10秒間隔で測定した水温変動の遅れ時間から内部波の進行方向と速度を求めた. 7月末と8月中旬の第1躍層内水深1.3mでの測定で, 波速7.1cm/secと6.7cm/secを得た. 前者では約110秒と約39分の周期が認められ, 波速7.1cm/secに対応して波長7.81mを得た. 水温垂直分布を考慮して求めた最大波高は約50cmとなった. 後者では110秒周期の波はごく弱く, 周期約1.5時間の卓越波が認められた. 前者は昼間最大風速8m/sec程度の谷風の影響によるものであり, 後者は夜間で微風あるいは無風状態のためであろう. 波向は両者とも風向に支配されているようである. 弁天池と永瀬ダム湖の波速の相違は水温躍層より下の層の厚さの影響であろう. 第2躍層も三角枠で測定・解析を行ったが, 波速が大なためΔt=10秒では十分な成果は得られず, Holmboeモデルによる解析でこのことが裏付けられた.
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