現地測定は夏期に弁天池の第1の躍層付近の水温変動を対象としたが天候不純のため十分な測定ができなかった。秋期には永瀬ダム湖の表面冷却にともなう対流によって貯水池上層の水温が一様化し、さらには躍層が漸次浸食破壊されて等水温層の厚さが漸増する実態を測定することに重点をおいた。また、昨年度に測定した膨大な水温変動観測資料に周波数解析手法を適用し、さらに、二層界面波およびHolmboeの方式を適用してそれらの適合性を調べた。電磁流速計は記録器の不備と固定法の困難さのため有用なデータが得られなかった。 弁天池では一辺2〜3mの三角形の3頂点から第1水温躍層の上中下にセンサーを設置して△T=10秒で測定して、内部波の波速を推定し2.1〜2.5cm/secを得た。卓越周波数は日により異なり、第1躍層の水温変動は基本的に非定常性を持つことがわかった。永瀬ダムでは一辺2mの正三角形枠を使用した。第1躍層では水温変動波形のずれから9〜12cm/sec程度の波速が認められた。また二層界面波モデルによる計算ではダム潮幅方向について約10cm/secとなり適合し、第1躍層に生じる波動の規模は貯水池の幅に支配されることがわかった。スベクトルにはモード2に相当するピークが見られるが卓越波とは言い難い。また第2水温躍層では水温勾配のもっとも急な値を用いた場合にHolmboeモデルが適合した。夏期の普通の風の状態では第1水温躍層を突破しての混合は非常に困難であり、また第2躍層では解析したデータでの水粒子の移動高はせいぜい70cmで、混合には無関係であろう。秋期の対流混合のデータから表面冷却による冷水塊の下降速度が得られ、ほぼ理論式が適合することがわかった。この対流流動の下限の低下と気温や水温との関係についての解明を今後の研究課題としている。
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