研究概要 |
本年度は温州みかんとバナナを対象として実験を行なった. 温州みかんについては, 東京大学二宮果樹園で収穫した約100Kgのみかん(品種:尾張)を供試し, 6個のチャンバに試験区を設けて, 12月中旬から2月初めにかけて貯蔵実験を行い, 貯蔵中の浮き皮の発生および進行状況をX線CTによりサンプルみかんを追跡し, 非破壊で調べた. 試験区は貯蔵温度を5°Cと15°Cとし, それぞれの温度に対して予措, 落下, 無処理の試験区を設けた. X線CTによる浮き皮検出のためのみかんの撮影は, 各試験区から10個ずつのサンプルみかんを選んで, 貯蔵開始前と貯蔵中に3週間毎に追跡調査を行った. X線CT画像はポラロイド写真撮影を行い, その写真を使って画像処理装置(ピアスLA-500)で画像解析を行い, みかんの果皮下の果肉との間の空隙を判別し, 断層面積に対する空隙部分の比率(隙間率)で浮き皮の程度を表わす指標とした. また, 同時に各試験区のみかんの糖度, 酸度, 甘味比(糖度/酸度), 重量変化, 果皮色などの測定を行った. みかんの貯蔵中の呼吸量(Co_2放出量)は赤外線ガス分析計で行い, Co_2放出速度, 累積Co_2放出量を測定し他の因子との相関関係の検討を行った. なお, 2のCo_2濃度測定にはマイコンを利用して一定時間間隔でガスサンプリングを行い自動計測を行った. 本年度の実験結果として, 予措の浮き皮, 酸度の低下および重量減少に対する防止効果, 落下による浮き皮, 酸度の低下, 重量減少への促進効果等の知見を得た. バナナについては, X線CTの青果物の化学成分, 特に糖度の測定への適用を考えて, 熟度に応じて糖度が顕著に異なるバナを使って, そのX線断層のCT値により検討を行った. その結果, 供試した糖度約5, 10, 20%のバナナの断層面の平均CT値にほとんど差がなく, したがって, 青果物の糖度の測定にX線CTの適用はあまり有効ではないと考えられた.
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