研究概要 |
本研究は, モレキュラーシーブ(結晶性人口ゼオライト)の特殊な吸着性, その中でも特に高い水分子の吸着性能に着目し, 今日広く実用されている凍結乾燥装置が, 凍結試料から昇華してできた水蒸気を氷結させて捕集するバッチ型の冷凍機を用いたコールドトラップ方式であるのに対して, モレキュラーシーブを水分トラップとして用いた低コストの連続型凍結乾燥装置の開発に必要な各種の設計標準値を明らかにする目的で行うものである. 昭和62年度は, モレキュラーシーブ(以下MSと略称)をφ50×200mmのカルシウム管で作ったカラムに一定量封入し, これを水分トラップとして簡単な研究用凍結乾燥装置を試作して各種の実験を行い下記の成果を得た. (1) 最適MSの決定 最適MSの候補としてタイプ3A(有効吸着孔径3〓)と4A(4〓)の二種類を選び, これらの吸着減圧性能を調べた. その結果, カラムに充填したMSの層厚さやペレットの形状・寸法に関係なく, 凍結乾燥に必要な真空度(0.1Torr以下)に到達する時間は4Aより3Aの方が早いことがわかった. したがって, 3Aを最適MSと決定した. (2) MSの吸水能力限界 供試MSを3Aの 一種類に絞ってその吸水特性を調べた. その結果, 凍結乾燥を行う低圧状態での吸水能力限界は, カラムに充填したMSの質量の約10%であり, この能力の範囲内では昇華してできた水蒸気をほぼ100%捕集(吸水)することがわかった. (3) 吸水MSの最適加熱再生条件 再生温度250°C, 再生時間1.5〜2hの条件のもとで加熱再生すると, 92%以上の高い脱水率を得た. (4) 加熱再生反復の可能性 (3)で得られた最適加熱再生条件によってMSの吸水【double half arrows】熱再生の繰り返し実験を行った結果, 加熱再生では常に高い脱水率が得られ, 再生後の吸水も良好に行われた. また, MSの極端な劣化もみられなかった.
|