本研究では、すでに開発した環境調節装置(順化装置)を利用して、培養器内で無菌培養された早期培養苗を供試して、順化期間の短縮と活着率を向上するための好適順化環境を探索し、組織培養苗を急速大量生産するための基礎資料を得ることを目的とする。 順化過程における、炭酸ガス施用による培養苗の生育促進効果を調べるために、2台の順化装置を用い、昼間に炭酸ガス濃度が約700ppmになるよう炭酸ガスを施用した区(炭酸ガス施用区)と、無施用の区(無施用区)を設け、キクおよびショウガを供試して生育比較試験を行った。その結果、炭酸ガス施用区の乾物重、葉数、草丈などは、無施用区のそれらを上回り、炭酸ガス施用によって、生長が促進されることが確認された。このことから、順化過程における炭酸ガス施用は、培養苗の順化期間の短縮方法のひとつとして有効であると考えられた。 さらに、順化装置を利用して、新たな苗増殖法を検討した。すなわち、苗本数を増やす増殖時の培養開始から順化終了までの期間を短縮するために、培養器内で生長したカーネーションを供試し、慣行法にしたがってショ糖培地を含む培養器内に節挿しし培養後順化した場合と、環境調節を行った順化装置内で節挿しし水耕養液によって生長させた場合の生育比較試験を行った。その結果、湿度環境、光環境を好適に維持してやれば、無糖培地においてもカーネーション小植物体が発根・生長し、その生長量は有糖培地を用いた従来の培養法のそれに比べ勝ることが示された。この結果は、発根ステージにおいて無糖培養が可能であることを示唆するとともに、培養苗の発根・順化期間を短縮するため環境調節法の基礎データとして利用できよう。
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