泌乳後期における成長ホルモンの投与が、乳牛の乳量、乳成分率および代謝に及ぼす影響について調べた。供試牛は泌乳200〜230日のホルスタイン種4頭である。各牛とも予備期10日、対照-I期5日、ホルモン投与期5日、対照-II期10日とした。ホルモン投与期には、1日1回午前8時に成長ホルモン52IUを皮下注入した。対照期には生理食塩水を注入した。また、体温、心拍数、呼吸数をデータロガーに集積し、コンピュータで分析した。尾静脈より採血し、血中ホルモン濃度と代謝産物濃度とを測定した。結果は以下のとおりである。 1.泌乳後期における成長ホルモンの投与によって、乳量が3.4Kg/日増加した。しかし、乳成分率には影響を及ぼさなかった。 2.成長ホルモンの投与は彩食量には影響を及ぼさなかった。したがって、飼料の粗効率が著しく改善された。 3.成長ホルモンの投与は血中の遊離脂肪酸濃度を上昇させた。成長ホルモンには、体組織の動員および栄養分の体内での分配を調節する作用があるものと思われる。成長ホルモンを泌乳牛へ投与すると、主としてホルモンのこの作用によって、乳量が増加するのであろう。 4.成長ホルモンの投与は乳牛の体温を低下させ、心拍数を増加させる傾向がある。成長ホルモンには体の代謝活性を昂進させる作用もあるものと思われる。 以上の結果から、わが国における飼養管理技術のもとにおいても、成長ホルモンの投与は乳量を増加させることが確認された。また、このホルモンは、乳牛の体組織の動員、栄養分の体内での分配および牛体の代謝活性などの調節に関与しているものと思われる。
|