昭和62年度では、直径2〜5mmのウシ卵胞を体外で培養する(In tra法)ことにより、より生理的に卵胞内卵子(卵母細胞)を体外成熟させ、従来の卵胞から吸引して取り出した卵子を体外成熟させた場合(Extra法)の受精および発育能を比較、検討した。すなわち、両法で成熟させた卵子を体外(In vitro)または雌ウサギの卵管内(In vivo)で1〜3日間培養し、受精および分割立を検討した。その結果、体外成熟率はIn tra法(57.9%)とExtra法(52.7%)に有意差はなかたっが、In tra法によるウサギ卵管内の受精率(49.3%)および分割率(2〜8細胞期胚・34.6%)はExtra法より有意に(P<0.025)高かった。以上の結果から、卵子の成熟はIn tra法により満足のいくものと思われたが、培養時間がExtra法より長い(24、28-48時間)こと、正常卵胞の判別および切り出しに時間を要すること、など欠点もあることが考えられた。 昭和63年度は、正常様卵胞(直径約10mm)から顆粒膜屑細胞を回収し、これを2mlの培養液(TCM199+15%発情牛血清)が入った培養用ペトリデッシェ(30×10mm)添加 (5×10^6個/m)することにより、卵胞培養に似た(=人口卵胞)方法を試みた。また、ウシ精子の受精能獲得法についても、凍結精液を用いて、上降法(Suim-up)とヘパリン処理(100μglm)により体外受精も50〜60%と向上し。 以上2ヶ年の研究成果より、現在のウシ卵母細胞の体外成熟率、受精率、分割率(2〜8細胞期)、および胚盤胞への発育率は、各々60〜70%、50〜60%、50%、10〜20%である。受精から胚への発育は、ウサギ卵管を使用しないで、ウシ卵管上皮細胞との共培養により、完全体外培養系が確立され、本研究で得られた胚盤胞を移植された3頭の内1頭が、平成元年3月23日に分娩する予定である。
|