哺乳動物の着床時における胚盤胞と子宮内膜上皮細胞との間の細胞間相互認識および着床を誘起する物質についてはほとんど知られていない。本年度はラット胚盤胞と子宮内膜上皮細胞の相互関係を体外培養法と電子顕微鏡学的方法により明らかにしようと試みた。実験には3〜6ケ月齢のウィスター系ラットを用いた。ラットは妊娠5日目の18:00時から22:00時に放血屠殺し、子宮灌流により胚盤胞を得た。また、胚の灌流時に、子宮内膜上皮細胞層を機械的に剥離した。マイクロマニピュレーターを用いて子宮内膜上皮断片の上に胚盤胞をのせて、0.3%牛血清アルブミン(BSA)含有ダルベッコ修正培養液中で12〜18時間培養した。その結果、透明帯のついている胚盤胞を含めて47コの胚盤胞のうち43コは拡張胚盤胞へ発生していたが、子宮内膜上皮断片への接着は一例も認められなかった。そこで、培養前に0.3%フィトヘマグルチニンを用いて子宮内膜上皮断片に接着していた胚盤胞数は38コであった。しかしながら18時間以上の培養においても、胚盤胞の円筒形成が認められず、それ以後の胚盤胞と子宮内膜上皮の接着に関する相互進展は認められなかった。着床直前の胚盤胞と子宮内膜上皮断片は両者ともにInvitro培養下において12〜18時間は生存可能であるが、本実験の培養条件下では接着しなかった。従って、本実験において培養中の胚盤胞と子宮内膜上皮の接着には何らかの条件が不足しているものと考えられた。フィトヘグルチニンお存在下で接着した胚盤胞と子宮内膜上皮細胞間の微細構造の電子顕微鏡学的観察は現在続行中である。
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