研究概要 |
1.九州, 沖縄の各地で捕獲あるいは拾得された野生哺乳類に, ヒトとイヌを加えた11科15属16種(50個体)から得られたマダニ類を同定した. その結果, これらの宿主から2科4属9種(245個体)のマダニ類を発見した. 特にキチマダニが優占的なことが注目された. これらの成果は第16回ダニ類研究会大会(昭和62年10月30日〜31日, 於九州大学)において発表された. 2.フタトゲチマダニの吸血に伴う卵形成と交尾時期との係りについて, 光顕的及び電顕的観察を行った. 交尾は卵母細胞が血体腔に突出し, 卵巣上皮細胞から発達した索状細胞を介して卵巣壁に付着するようになる吸血4日目に行われ, 以後飽血まで(吸血6日目)の期間における活発な吸血によって卵巣と卵殻が急速に形成されること, 及び卵母細胞の胚胞は索状細胞側に近く位置し, 卵巣腔内に多数の精子が認められることなどを明らかにした. これらの結果は, 日本動物学会(昭和62年10月7日〜9日, 於富山大学)及び第38回西日本畜産学会(昭和62年10月16日, 於鹿児島大学)で発表された. 3.フタトゲチマダニ若ダニの前脱皮期間及び脱皮後の期間における体重変化と排泄との関係を生理学的手法により解明した. 本種若ダニの前脱皮期間における体重減少は3相を示し, それの著しい第1相には運動活発かつ窒素代謝産物のグアニンだけが排泄された. その後の二つの相では運動も排泄も認められなかった. 脱皮後も体重は2相の減少を示したが, グアニンは体重減少の著しい第1相(脱皮直後から5日目まで)に排泄されるが, その後は排泄されなかった. 他方, ヘモグロビンの代謝産物であるヘマチンはグアニンよりも遅れて(脱皮後3.5日から6.5日まで)排泄され, その後は排泄されぬことを明らかにした. これらの事実は本種の脱皮に伴う成長と発育に生理学的な裏づけを与えるもので, 以上の成果をまとめてアメリカの医学昆虫学雑誌(J.Med.Ent.)へ投稿した.
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