前年度の研究でデンプンに対して適応させない状態のルーメン微生物系を用いると、デンプンの共存によるセルロース分解抑制がエントディニウムによって著しく緩和されることがわかった。今年度はルーメン微生物を予めデンプンに適応させた場合に繊毛虫によってこのようなデンプンによる抑制効果が緩和されるかどうかをまず検討した。すると今回は抑制効果の緩和がほとんど認められず予想外の結果となった。今回の系ではエントディニウムのみでなく、セルラーゼ活性のあるポリプラストロンなどを含む混合繊毛虫相を対比として用いたことから、これらの繊毛虫がデンプンを捕食し、セルロース消化を行わなかったことによって低セルロース消化率が導かれたものと推察された。デンプンが存在しない場合には繊毛虫が存在する方でセルロース分解率が高かったことからもこの仮説が導きだされた。しかし、この仮説が成立するためにはセルラーゼ活性のある繊毛虫存在下で、セルロース利用細菌数が減少していなくてはならない。そこで基質利用性に基づいて細菌種構成を検討した。その結果、繊毛虫の存在によってデンプン利用細菌ならびにセルロース利用細菌数が減少し、一方ペクチン利用菌、キシラン利用菌に変化がないことがわかった。この結果は定説とされてきた報告に相反するものであるが、セルロース分解とデンプン及び繊毛虫の関係についての上記の仮説と一致しており、これを支持するものであった。この知見は新しいものであるので追試による確認後発表を予定している。
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