ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、母性遺伝することから母系伝播経路解析の遺伝標識として用いることが可能であり、さらに核DNAと比較して塩基置換速度が約10倍速いので、種内の遺伝的関係を調べるにはきわめて有用である。フィリピン在来牛を調べたところ、亜種のレベルと言ってよいほど大きく異なる2種類のmtDNAが混在し、一つはヨーロッパ牛、他の一つはインド牛由来と考えられた。DNA多型は、6種類の制限酵素で、計7ヶ所認められた。それに七カ所のmtDNA多型を示す部位を制限酵素切断地図上に番地を決定した。1、EcoRv、tRNA^<VAL>1394、2、BglII Cytochromeoxidase I 6115、3、BamHI.Cytochrome Oxidase III 9602 4、Scal NADH dehydrogenaseIV 11067 5、HindIII NADH dehydrogenaseV 12174 6、ScaI Cytochromeb 15605 7 PstI tRNA^<pro>15738 一方、核DNAの遺伝多型は、始めにヒトMHC遺伝子をプローブとして各家畜について調べた。MHC遺伝子は、抗病性・体質など経済形質と関連する重要な遺伝子である。血清型と同様に、DNA多型においても多型性が高いことが判明した。しかし、ハイブリダイズする断片が余りにも多い、逆に解析が複雑で困難であった。また用いたプローブがヒト由来なのでハイブリダイズする効力が弱いことと、偽遺伝子との判別も問題となった。一般にDNA多型に関する研究は、ヒト・マウスが中心で家畜に関するものはきわめて少ない。とくに鶏は鳥類に属することから、哺乳類DNAがプローブに適さないことが多く、新たにプローブを開発する必要がある。そこで鶏ゲノムDNAからランダムクローニングを行ない、EcoRI切断2ー2.5kb断片を抽出し、puc12をベクターにして独立したクローン計28個を得た。そのうち4つのクローンを大量培養してプローブに用いた。調べた14品種間で特徴あるDNA多型に分布が観察された。
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