研究概要 |
肝性脳症, 小児便秘症等の特効薬として知られているラクチュロース(4-0-β-D-galactopyranosyl-D-fructose)に, ガラクトシル基を酵素的に導入し, より付加価値の高いと期待されるオリゴ糖合成を目的とした本研究では, 次のような実績を得ている. ラクチュロースを基質とするガラクトシル転移反応を触媒するβ-ガラクトシダーゼのスクリーニングの結果, Asp.ory2ae由来の酵素が最も効率よく転移反応を触媒する能力があり, 40%糖濃度における至適条件では, 28%のオリゴ酸の生成することが明らかとなった. 酵母(K,lactis)酵素は, ラクチュロース分解および転移の両反応が, 時間の経過と共に平衡に達し, オリゴ糖生成量も約10%であった. 細菌(E.coli)酵素による転移反応は起こらなかった. 以上の結果から, Asp.ory2ae由来の酵素を用いてラクチュロースの転移反応を行い, 生成したオリゴ糖の分離, 精製を試みた. 精製は, 活性炭カラムにより, 単糖, 二糖, 三糖および三糖以上のオリゴ糖にそれぞれ分離し, 最終的には調製用ペーパークロマトグラフィーによって, 各オリゴ糖成分の分画, 精製を行なった. 精製した糖の構造決定は, C_<13>-NMR, 完全メチル化糖およびその加水分解物からの部分メチル化アルジトールアセテートのMSによって, 行なった. 主要な転移糖は6-0-B-D-gal-actopyranosyl-lacturaseであったが, これは人乳中にも含まれている, ピフィダス活性糖である6-galactosyl-lactoseと類似の構造をもち, 同糖に比較しても, さらにビフィダス菌に対する選択性の強い資化性糖であることが期待された. 四糖および五糖成分についても, 6-0-β-galactose-型のいわゆる直鎖型のオリゴ糖であることが明らかとなった.
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